経済とマネーリテラシーについて深く考える(18)

2019-06-12

【消費税の実態】

消費税は消費者が払った分を事業者が一旦預かり、
国に収める間接税と考えられていますが、
実は厳密に言えば、これは間違いなのです。

本来の間接税は、消費者が払った額を、
そのまま国に納めることであり、
米国の小売売上税はこれにあたります。

しかし現在(2019年6月)の日本の制度では、
事業者の粗利益(売上-仕入)の8%が消費税であり、
預かったお金を支払うということとは 実質は直接税なのです。

売上が5000万円以下企業の場合、
売上の50~90%を機械的に仕入れ額とみなすという
「簡易課税制度」が設けられているため、
消費者が支払った8%は、
そのまま利益になっている場合が沢山あります。

例えば、ドイツなどでは、簡易課税制度の枠が
年間売上650万円以下とかなり狭められています。

また、自動車や家電品などの輸出企業は、
日本の部品メーカーに支払った消費税分は
税務署から還付されるという仕組みがあり、

これを「輸出還付金」といいますが、
一見正当に見えるこのシステムも
下請けである部品メーカーが、
消費税分をほとんど転嫁できていない
という現状もあります。

消費税増税が行われるのは、
日本政府の赤字が増えるのを補填する、
という側面だけが報道されていますが、

実際は 経団連などの企業を支えるという面が
非常に大きいということを知っておくべきです。

消費税の最大の不公平は、トヨタ自動車など
巨大輸出企業に対する還付金制度です。

大企業などは消費税を1円も税務署に納めないのに
巨額の還付金をもらっています。

私が10年度の有価証券報告書をもとに
これら大企業への還付金を推算したところ、
上位10社だけで8698億円に上ります。

10年度の還付金の合計は3兆3762億円(政府予算)で、
この額は全消費税収のおよそ28%に相当します。

還付金の最も多いトヨタ自動車は
過去5年間で1兆3000億円の還付を受けています。

消費者はトヨタの車を買う時に消費税を払います。
トヨタは当然、国内販売分の消費税を
税務署に納めなければなりません。

しかし、トヨタは還付金から差し引き1円も納税していません。
つまり、国内販売分の消費税額を差し引いても、
なお巨額の還付金がもらえます。

一方、中小事業者は消費税を完全に転嫁できないのに
納税額が発生するため、納税資金の手当てに四苦八苦
しています。

消費税は赤字でも納税額が発生します。

そのため、消費税の滞納は国の税金の中で
常に第1位を占めています。

巨大輸出企業は滞納の心配はまったくなく、
還付金の振り込みを楽しみに待っています。

こんな不公平があっていいのでしょうか。
なぜ消費税に輸出還付金制度があるのでしょうか。

政府は
「外国の消費者から日本の消費税はもらえないから、
トヨタなどが仕入れの際に払った消費税分を返すのだ」
と説明します。

ですがトヨタなどは下請けに
消費税を本当に払っているでしょうか。

経済取引では価格決定権を持っているのは
常に親企業です。

「消費税分をまけとけ」といわれれば
その価格で納品しなくてはならず、

たとえ消費税分を請求書に書いても
元の価格が下げられていれば消費税を
もらったことにはなりません。

消費税は価格への転嫁が力関係で決まる
不透明でいい加減な税金なのです。

トヨタなどの輸出大企業は実質的に払ってもいない
消費税を返してもらっているのです。

これは税制を使って輸出補助金を出しているのと同じです。
もし、どうしても還付したいなら、下請けにも返すべきです。

その上、同じ非課税でも、患者から消費税分をもらえない
医療機関の社会保険診療報酬に還付金はありません。

ですから病院などは診療材料や薬に含まれている
消費税分を自己負担せざるを得ません。

つまり医療機関は消費者と同じなのです。
これを「にせ非課税」と言います。

医師会などが社会保険診療報酬も輸出のように
還付金のある免税にしてほしいと運動しているのも
分かります。

全国の税務署のうち消費税の還付金が
消費税の税収を上回っている、
赤字の税務署が九つもあります。

その九つの税務署は、いずれもその管内に
輸出企業を抱えています。

赤字の一番大きい税務署は
トヨタ自動車のある愛知・豊田税務署です。

還付金をもらっている企業は
全国でおよそ15万5000社、
そのほとんどが輸出企業です。

還付金が一番多いのは
東京麹町税務署で2603億円もあります。

これらの税務署の管理運営部門は月末までに
還付金を振り込まないと利息をつけなければ
なりませんので振り込みに追われています。

本来、税務署の仕事は税金を集めることですが、
こと消費税に限っては税金を返すことも仕事なのです。

今後、税率が10%になれば、還付金は2倍になります。
トヨタ自動車でいえば2246億円が4492億円になります。

逆に中小事業者の場合、仕入れや周辺の取引価格は
確実に消費税分が上がりますが、売り上げは横ばいか
減少する可能性があります。

にもかかわらず、消費税の納税額は2倍に跳ね上がります。
簡易課税を選択している場合は売り上げに一定割合を
かけるだけですから税率引き上げ分はそのまま増税になります。

もっとも、簡易課税制度は税率引き上げとともに
廃止される可能性がありますから、
それだけで納税額は多くなります。

すると、不公平はますます拡大します。

消費税増税を提言している裏には、
税率引き上げで大企業が儲かる
仕組みがあるからです。