日本神話/(30)古事記:高千穂と神々の闘い⑨邇芸速日命と那賀須泥毘古

その後一行は、忍坂(おしさか)の大室(おおむろ:奈良県桜井市忍阪)に辿り着いた。

そこには岩穴に住まう、尾が生えた土蜘蛛八十建(やそたける)が待ち受けていた。

そこで神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)たちは宴を開き、八十建たちも招くと、宴の配膳係を八十建たちに遣わした。

なぜなら係の者には、歌が聞こえたら八十建たちに斬りかかるように命じていたからである。

このことに気づかない八十建たちは宴に招かれ、上機嫌に喰らい呑んだ。

そして機が熟したとみるや辺りに歌が響いた。

その歌を聞いた配膳係は剣を抜き、八十建たちを切り殺したのであった。

八十建やたちを服従させた一行だったが、休む間もなく次の戦いに突入した。

兄師木(えしき)と弟師木(おとしき)という倭国の磯城(しき:現在の三輪山の西側一帯)の豪族との戦いが始まった。

なんとかこの勢力との激しい争いにも勝利した東征軍だったが、連戦と長旅のために疲れが濃く見えてきていた。

そこで神倭伊波礼毘古命は次の歌を歌った。

「楯並(たたな)めて 伊那佐の山の 樹の間よも い行きまもらひ 戦へば  吾あはや飢ゑぬ 島つ鳥 鵜養うかひが伴とも 今助けに来ね」(現代語訳:伊那佐の山の木の間を通って、守り戦ってきた。しかし我々は疲弊し飢えているので、鵜養の一族達に助けを求めたい)

そうしていると那賀須泥毘古(ながすねびこ:登美毘古)のもとに居た邇芸速日命(にぎはやひのみこと)が東征軍の陣内に突如として現れた。

この者が言うには「天津神の御子が天降ったと聞いたので、私もその後を追って降りて来ました」そして、天津神の印である宝を献上し帰順する事を宣言した。

 

土蜘蛛
神倭伊波礼毘古命の東征に何度か現れる「土蜘蛛(つちぐも)」と呼ばれる集団は、「蜘蛛(くも)」のことではなく、東征軍に従わない部族の総称と言われています。『日本書紀』に出てくる景行天皇や神功皇后(じんぐうこうごう)の段にも見られ、各地域の文化風土を編纂した歴史書である『風土紀』にも土蜘蛛の記載があり、全国各地の反政府勢力の総称として、後の時代にも使われました。
邇芸速日命
邇芸速日命(にぎはやひのみこと)は、東征の際に倭国に陣取る那賀須泥毘古(ながすねびこ)が奉じる神様で、那賀須泥毘古の妹である登美夜毘売と婚姻したとされれています。祭祀を司る有力豪族の物部連(もののべのむらじ)らの祖神で、古くより倭国に祀られていたと言われていますが、謎も多い神様。『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』には、邇芸速日命に関する記述が多く見られますが、江戸時代以降、この先代旧事本紀が偽書と考えられていたので、記述の信憑性は低いとされています。

 

これまでの学び

(0)古事記:はじめに

(1)古事記:天地開闢① 天地の始まりと神様の誕生

(2)古事記:天地開闢② 別天津神と神世七代

(3)古事記:天地開闢③ 伊耶那岐命と伊耶那美命の国生みと神生み

(4)古事記:天地開闢④ 伊耶那岐命

(5)古事記:天地開闢⑤ 伊邪那美命

(6)古事記:天地開闢⑥ 伊耶那美命の死と火之迦具土神

(7)古事記:天地開闢⑦伊耶那岐命の黄泉の国訪問

(8)古事記:天地開闢⑧禊祓と神々の誕生

(9)古事記:天地開闢⑨天照大神と須佐之男命の誓約

(10)古事記:天地開闢⑩天岩屋戸と高天ヶ原の神々

(11)古事記:天地開闢⑪五穀と須佐之男命の大蛇退治

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(12)古事記:出雲と天孫降臨①大国主神と稲羽の白兎

(13)古事記:出雲と天孫降臨②大国主神と八十神の迫害

(14)古事記:出雲と天孫降臨③大国主神の根の国訪問

(15)古事記:出雲と天孫降臨④大国主神の国作り

(16)古事記:出雲と天孫降臨⑤葦原中国の平定と建御雷神

(17)古事記:出雲と天孫降臨⑥事代主神の服従

(18)古事記:出雲と天孫降臨⑦建御名方神の反抗

(19)古事記:出雲と天孫降臨⑧大国主神の国譲りと出雲大社

(20)古事記:出雲と天孫降臨⑨天孫降臨と猿田毘古神

(21)古事記:出雲と天孫降臨⑩天照大神の神勅

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(22)古事記:高千穂と神々の闘い①木花之佐久夜毘売と石長比売

(23)古事記:高千穂と神々の闘い②木花之佐久夜毘売の出産

(24)古事記:高千穂と神々の闘い③海幸彦と山幸彦

(25)古事記:高千穂と神々の闘い④火照命と火遠理命の争い

(26)古事記:高千穂と神々の闘い⑤豊玉毘売の出産

(27)古事記:高千穂と神々の闘い⑥神倭伊派礼毘古命の東征

(28)古事記:高千穂と神々の闘い⑦熊野での苦戦

(29)古事記:高千穂と神々の闘い⑧大和への進撃

 

本日の課題

1:今回の学びで感じたことをシェアしてください。

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