日本神話/(31)古事記:高千穂と神々の闘い1⑩神武天皇の即位

邇芸速日命(にぎはやひのみこと)が服従したことにより、倭国平定の障害が無くなった。

なぜなら最大の敵対勢力であった那賀須泥毘古(ながすねびこ)の軍勢も、邇芸速日命(にぎはやひのみこと)の帰順により、その勢力が目に見えて衰え弱体化したからである。

各地を転戦して、荒ぶる神々を鎮め、抵抗勢力は退け払った神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)率いる東征軍は、畝火(うねび)の白梼原(かしはら:奈良盆地南部付近)に宮殿を造り、天下を治めることとなり、神倭伊波礼毘古命はこの時に名を改め、「初代神武天皇」となった。

神武天皇は、既に日向で阿比良比売(あひらひめ)という妻を娶り、多芸志美美命(たぎしみみのみこと)と岐須美美命(きすみみのみこと)という二人の御子を設けていたが、天皇に即位した後、皇后となる正妻を探していた時に、大久米命(おおくめのみこと)が次のように進言した。

「三嶋(大阪府旧三島郡付近、現在は茨木市・高槻市吹田市)にすばらしき美少女が居ります。

その娘の母は勢夜陀多良比売(せやだたらひめ)と言い、美和(三輪)の大物主神が彼女を気に入り、彼女が大便をしている時に丹塗矢(赤い矢)に化け、水が流れる溝から下りその美人の陰部を突きました。

驚いた美人は慌てて矢を持ち駆け帰り、家の床に置くと、たちまち矢は麗しい壮夫(おとこ)に成った。

こうして二人は結ばれ、もうけた子が富登多多良伊須須岐比売(ほとたたらいすすきひめ)と言い、別名を比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ)と呼ばれるので、彼女は大物主の御子神であります」

という話であった。

この話を聞いた神武天皇は早速彼女のいる場所に向かうことにした。

七媛女(ななおとめ:7人の少女)が、高佐士野(たかさじの)に遊びに行っ時、伊須気余理比売もその中におり、ちょうどその高佐士野に居た大久米命が伊須気余理比売を見て、歌で神武天皇に伝えた。

「倭の高佐士野たかさじのを行く、7人の少女達よ 誰を妻にしようか」

伊須気余理比売は少女達の先頭にいたが、神武天皇はその少女たちを見るや、一番先頭に伊須気余理比売が立っていると分かり、歌で応えた。

「ともあれ一番先に立っている年長の娘を妻としよう」

それを聞いた大久米命が、神武天皇の言葉を伊須気余理比売に伝えると、彼女が大久米命の黥(さ)ける利目(目元に入れ墨をしている)を見て、不思議に思って歌い答えた。

「どうして鋭い目をしているのですか?」

大久米命は歌って答えた。

「貴女に会うのに入れ墨をし、鋭い目にしているのです」

こうして伊須気余理比売は神武天皇に対し「仕え奉ります」と承諾した。

その後二人は日子八井命(ひこやいのみこと)、神八井耳命(かむやいみみのみこと)、神沼河耳命(かむぬなかわみみのみこと)の3人の御子を設けた。

この3兄弟の末っ子である神沼河耳命が多芸志美美命(たぎしみみのみこと)を倒して第二代・綏靖天皇(すいぜいてんのう)になった。

 

橿原神宮
橿原神宮は、神武天皇を祀る神社です。創建されたのは明治23年(1890年)と、新しい神社ですが、古事記に記載のある神武天皇の住んでいた畝傍橿原宮(うねびかしはらぐう)が、この畝傍山の東麓に比定されています。1940年には、この神社で紀元2600年奉祝式典が行われ、年間で1000万人が参拝しました。現在でも多くの人が参拝に訪れる神社です。


健磐龍命
健磐龍命(たけいわたつのみこと)は、阿蘇神社の最新として知られていますが、阿蘇神社においては神武天皇の子供である神八井耳命(かむやいみみのみこと)の子供として祀られていて、阿蘇山の神としてだけではなく、治水や農耕の祖神として現在も信仰されています。

 

これまでの学び

(0)古事記:はじめに

(1)古事記:天地開闢① 天地の始まりと神様の誕生

(2)古事記:天地開闢② 別天津神と神世七代

(3)古事記:天地開闢③ 伊耶那岐命と伊耶那美命の国生みと神生み

(4)古事記:天地開闢④ 伊耶那岐命

(5)古事記:天地開闢⑤ 伊邪那美命

(6)古事記:天地開闢⑥ 伊耶那美命の死と火之迦具土神

(7)古事記:天地開闢⑦伊耶那岐命の黄泉の国訪問

(8)古事記:天地開闢⑧禊祓と神々の誕生

(9)古事記:天地開闢⑨天照大神と須佐之男命の誓約

(10)古事記:天地開闢⑩天岩屋戸と高天ヶ原の神々

(11)古事記:天地開闢⑪五穀と須佐之男命の大蛇退治

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(12)古事記:出雲と天孫降臨①大国主神と稲羽の白兎

(13)古事記:出雲と天孫降臨②大国主神と八十神の迫害

(14)古事記:出雲と天孫降臨③大国主神の根の国訪問

(15)古事記:出雲と天孫降臨④大国主神の国作り

(16)古事記:出雲と天孫降臨⑤葦原中国の平定と建御雷神

(17)古事記:出雲と天孫降臨⑥事代主神の服従

(18)古事記:出雲と天孫降臨⑦建御名方神の反抗

(19)古事記:出雲と天孫降臨⑧大国主神の国譲りと出雲大社

(20)古事記:出雲と天孫降臨⑨天孫降臨と猿田毘古神

(21)古事記:出雲と天孫降臨⑩天照大神の神勅

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(22)古事記:高千穂と神々の闘い①木花之佐久夜毘売と石長比売

(23)古事記:高千穂と神々の闘い②木花之佐久夜毘売の出産

(24)古事記:高千穂と神々の闘い③海幸彦と山幸彦

(25)古事記:高千穂と神々の闘い④火照命と火遠理命の争い

(26)古事記:高千穂と神々の闘い⑤豊玉毘売の出産

(27)古事記:高千穂と神々の闘い⑥神倭伊派礼毘古命の東征

(28)古事記:高千穂と神々の闘い⑦熊野での苦戦

(29)古事記:高千穂と神々の闘い⑧大和への進撃

(30)古事記:高千穂と神々の闘い⑨邇芸速日命と那賀須泥毘古

 

本日の課題

1:今回の学びで感じたことをシェアしてください。

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