日本神話/(12)古事記:出雲と天孫降臨①大国主神と稲羽の白兎

須佐之男尊(すさのおのみこと)より生まれた出雲の神々だが、その6代目の子孫にあたる大国主神(おおくにぬしのかみ)、またの名を大穴牟遅神(おおなむじのかみ)の兄弟には、八十神(やそがみ)と呼ばれる多くの神々がいた。

八十神は皆で絶世の美女と言われる八上比売(やがみひめ)に求婚するために、大国主神に荷物を背負わせ、従者として引き連れて稲羽国(いなばのくに)の八上に向かった。

途中の気多(けた)の岬に一行が着いた時、毛をむしり取られた丸裸の素兎が倒れていた。

そこで八十神達は、その兎に「お前がその身体を治したければ、この海水を浴びて、風の強く吹く山の頂で寝ることだ」と言った。

その八十神達の言葉を信じた兎は、言われた通りに海水を浴び、山の頂で身体を乾燥させることにした。

ところが、海水が乾くと体中の皮膚が裂けて、激しい痛みに襲われる。

そのあまりの痛みに悶えて兎は泣き伏していると、大きな荷物を背負った大国主神が遅れてそこにやって来た。

大国主神が兎に泣く訳を尋ねると、兎は事のいきさつを話した。

兎は淤岐(おき)の島から海を渡って、この地に来るために、海にいる鮫(わに:昔はサメのことをワニと呼ぶ地域もあった)を騙して、「我々兎とあなた方鮫を比べて、どちらの一族が数が多いのか数えたい。鮫の一族全員を呼んで、この島から海岸まで並んでください。そして私が鮫の一族の背に乗り、海岸まで数えながら渡りましょう。」と持ちかけた。

騙されたと知らない鮫の上を兎はぴょんぴょん数えながら渡って来たが、最後の鮫の背を跳んだ時に、兎はつい「あなた方は騙されたんだよ」と暴露してしまう。

その兎の言葉を聞いた途端、怒った鮫によって報復を受け、兎は毛をむしり取られてしまった。

また兎は「毛を取られて悲しんでいると、八十神達が通りかかり『海水で体を洗い、山の頂で身体を乾かすと良い』と教えてもらったので、その通りにしていたら、私の身体はすっかり皮がひび割れ、激痛に苦しんでおりました」と泣きながら言った。

兎を可哀想に思った大国主神が「今から、この河口に行き、真水で身体を洗い流し、その河口の蒲の穂(花粉)を取って敷き散らし、その上に横になれば治るだろう」と教えた。

兎がその通りにすると、たちまち身体は元通りに治った。

喜んだ兎は、大国主神に「八十神達は決して八上比売と結ばれないでしょう。荷物袋を背負った従者のようですが、あなたこそが八上比売を娶めとることが出来るでしょう」と言った。

この兎は稲羽(いなば)の白兎と呼ばれ、後に兎神となって鳥取県の白兎神社に祀られている。

白兎の託宣の通り、八上比売は八十神達の求婚を拒否し、大国主神の妻となることを宣言したのである。

白兎神社

淤岐ノ島
隠岐の島とは、白兎が住んでいた隠岐の島と言われる島は大きく分けると二説あり、一つは鳥取県鳥取市の気多の岬から北に150メートル沖合にある小さな島で、現在も淤岐ノ島と呼ばれています。もう一つは、島根県の隠岐の島です。ただ単に沖にある島だという説もありますが、古事記に記述のある淤岐ノ島は、島根県の隠岐の島が有力だとされています。

淤岐ノ島(鳥取県)

隠岐の島諸島(島根県)

隠岐の島諸島(島根県)

八十神
サメに皮を剥がされて苦しんでいた白ウサギに対して、八十神たちは海水を浴び、風に当たって乾かすことを勧めました。これをすると白兎は傷が痛み、更に苦しみました。これは一見すると意地悪な提案でしたが、逆に見ると白兎を消毒したと解釈することもでき、大国主神が先に白兎に出会っていれば、傷が化膿して死んでしまったとも言われます。
白兎神社
鳥取市にある白兎神社は古事記にある稲羽の白兎を祀る神社で、境内にある「不増不減の池」は毛をむしられた白兎が傷口を洗ったとされる「水門(みなと)」だと伝えられています。太古は内海池の流出口にあたっていたので、水門と呼ばれていた小さな池ですが、大雨が降っても水位は上がらず、日照りが続いても水位が下がることのない不思議な池です。

不増不減の池

大国主神
大国主神は出雲の英雄で、医療の祖神とも言われますが、「日本書紀」には、人間だけではなく動物にまで秒この治療方法を授けたとあります。恋物語が多いのも、この神様の特徴といえ、妃が何人もいたと伝えられています。

 

因幡の白兎の話(動画)

 

これまでの学び

(0)古事記:はじめに

(1)古事記:天地開闢① 天地の始まりと神様の誕生

(2)古事記:天地開闢② 別天津神と神世七代

(3)古事記:天地開闢③ 伊耶那岐命と伊耶那美命の国生みと神生み

(4)古事記:天地開闢④ 伊耶那岐命

(5)古事記:天地開闢⑤ 伊邪那美命

(6)古事記:天地開闢⑥ 伊耶那美命の死と火之迦具土神

(7)古事記:天地開闢⑦伊耶那岐命の黄泉の国訪問

(8)古事記:天地開闢⑧禊祓と神々の誕生

(9)古事記:天地開闢⑨天照大神と須佐之男命の誓約

(10)古事記:天地開闢⑩天岩屋戸と高天ヶ原の神々

(11)古事記:天地開闢⑪五穀と須佐之男命の大蛇退治

本日の課題

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1 個のコメント

  • kyorintomo@yahoo.co.jp より:

    有名な印旛の白兎ですね。
    白兎は鮫を騙したから痛い目に会っている訳ですが、善悪の判断など関係無く、困っている者を助ける大穴牟遅神の姿は優しさの象徴だと思いました。
    ちょっと思ったのですが、神話のエピソードとタルムードがなんとなく似ているように感じております。
    こういう行いをするとこうなりますとういう分かり易いエピソードが勉強になります。

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